「島さん」最新⑤巻、好評発売中!
著者:川野ようぶんどう
定価:726円 (本体660円)
ISBN:9784575859034
プロの漫画家になるまでに一番辛かったことはなんですか? またそれをどのように克服しましたか?
やっぱり何度新人賞に応募しても何もひっかからない、持ち込みに行っても編集者さんからは良い手応えをいただけない、担当さんがついてもやり取りの返事が来なくなる…そんな時は辛かったです。まだオンライン持ち込みとかもなくて、東京から地方へ帰る飛行機の中で絶望していました(笑)。
何度挑戦してもダメで、漫画そのものも嫌いになってしまい意識的に漫画から離れるようにしたんですが、そんな時にちょうど僕の大好きなサザンオールスターズさんが全国ツアーをやってくれていたので、各地のライブに行きました。
全国のサザンファンの友人とたくさん話したり、気負わず描いたサザン関連のイラストをとっても喜んでもらえて、好きなものを好きなように描いて喜んでくれる人がいるという事に触れさせてもらえました。それで最後にもう一回描いてみようという気持ちになってできたのが『島さん』1~3話のネームです。
新人の頃に言われた言葉で、心に残っている言葉はありますか?
「完成原稿を500枚描いたらその時はもうプロになってる」と言われた事があって、なんとなくそれを拠り所にして頑張っていました。
自分に置き換えて振り返ってみるとたしかにその通りになっていました…。
プロの漫画家になるまでの経験で、これが活きたと思うものはありますか?
いろんなバイトをしながら漫画を描いてましたが、特にコンビニの夜勤は20年以上やっていました。
いろんなお客さんとの思い出や夜勤中に巻き起こった出来事のメモは今とても役立っています。
ストーリー作りの練習のためにしていることや、しておいてよかったことはありますか?
手塚治虫先生の『ブラック・ジャック』や藤子・F・不二雄先生のSF短編漫画など、自分の好きな短編を一本丸ごと模写したり、プロットまで書き戻してみる事は構成の勉強になったと思います。
印象的なセリフ回しを考える時に、参考にしているものはありますか?
『島さん』では「おつかれさま」とか「またね」みたいな、生活の中のどこにでもある、なんでもないようなセリフを大事にしたいと思っています。
普通の言葉なんだけど、それが話の最初と最後で印象が違う大切なセリフになるようにエピソードを組み立てるよう意識しています。
作画の時に気を付けていることや、こだわっていることがあれば教えてください。
『島さん』の場合だと1話完結で出て来るキャラクターが毎回違うので、キャラクターデザインにいつも泣きそうになっています。
なるべく連載を持つ前に自分が描ける顔や体型のパターンは多く持っていた方がいいと思います。
今はスポーツ選手の写真名鑑なんかを買ってそれを参考にしながら作業しています。
ネームを作る時に何を一番大切にしていますか?
この世でいちばん嫌いな「締切」というものがどうしたって存在するので…。
とにかく不完全な空白のコマ、ページがあってもいいので「こんな感じの事を描く」という想定のもと、ハードルを下げた、たたき台になるネームを一気に最後まで作るようにしています。
そこからエピソードの順番を意識しつつ全体の形を整えていくようにしています。
漫画を描いていて一番楽しかったり嬉しかったりする瞬間はいつですか?
なかなか難しくて時間の許す限り描き直しの連続なのですが、自分の描きたい感覚をお話の中にちゃんと入れる事が出来たり、キャラの表情がイメージ通りに描けた時は嬉しいです。
でもいちばん嬉しい事は描いた後にやって来るもので、読んでくださった方からのあたたかい感想や応援の言葉をいただけた時は作業の辛さも吹っ飛びます。
10月26日に発売された新刊『島さん』5巻について、一番好きなシーンやセリフを教えてください。
5巻の中で今自分でいちばん好きな話は33話です。
一番好きというか感じてほしいシーンはあえて踏み込んで描いてなくて、最後に島さんとヒロ青年が亡きお母さんの好きだったものや思い出を一緒に話すところを読んでくださる方の中でそれぞれ想像してもらえたら嬉しいなと思っています。
最後に、プロの漫画家を目指すにあたって一番大事なことを教えて下さい。
新人賞の投稿や持ち込みで作品を否定されてしまうと自分自身が否定されてしまったような気持ちになるのですが、それはあくまでも描き方がまだうまくいってなかっただけで、自分が描きたかった衝動や感覚まで否定しないでその後も大切にしてほしいです。
今はSNSもあり他の漫画家志望者さんのステップアップも見えてしまい気になるんじゃないかと思いますが、漫画家人生のスタートに何年か違いがあっても、連載が始まれば自分の作品と読者の方々に向き合うのみです。
何枚もなんの評価もされなかった原稿を描きましたが、振り返ってみると今につながっていると思います。無駄な事はないと信じてお互いに頑張っていきましょう!