「わざと見せてる? 加茂井さん。」最新⑩巻、好評発売中!
著者:エム。
定価:770円 (本体700円)
ISBN:9784575859164
プロの漫画家になるまでの経緯を教えてください。
学生時代に賞を貰い、読み切りでデビューはしていたのですが全く連載会議で企画が通ることがなく、ひたすらネームを描き続ける日々を送っていました。(こういう人、多いと思う)
そこでもう漫画家の夢を諦めようとした矢先、ふとアシスタント先の先生から「エム。君ってしゃべってる会話の方が面白いから、自分自身を漫画にしてみたら?」と言われまして、その助言のまま適当に「エムさん。」というWEB漫画を始めて、適当にSNSに上げていたらバズってしまいまして、そこから色んな出版社さんから適当にお話を頂くようになり、適当な感じで今に至るという感じです。
つまりは全てが「適当」なので未だに自分がプロだという自覚がありません。でも今の時代はそういうデビューの方法も選択肢の一つなのだと思います。
新しい企画を立てるときにまず何から考えますか?
まずそれが「興味ある題材かどうか」を考えます。そして「何としてでも描きたい!」と思ってしまうようなら敢えてボツにします。今までの経験上、自分の趣味や好きなものを題材にした場合は思い入れが強過ぎたりして上手く行かないパターンがほとんどでしたので…。だから「嫌い」とまでは行かないけど「特に興味がない」題材を選んだ方が肩の力が抜けていいような気がします。
魅力的なキャラクターを作るために気を付けていることはありますか?
なるべく主人公は「自分」にして、周りのキャラは知り合いをモデルにするようにしています。友人だったり家族だったり学生時代のクラスメイトだったり。そうすれば「あ、この人はこういう行動をしない」とか「こんな言葉は絶対に言わない」とか自然に思い浮かぶので、作品に現実味と一貫性を持たせる意味でも役立っているのかなと思います。
ストーリー作りの練習のためにしていることや、しておいてよかったことはありますか?
高校の文化祭で「即興4コマ屋」という出し物をやっていました。お客さんから自由にお題を貰って、5分以内に起承転結のある4コマにしてプレゼントするというものです。これが意外と好評で20本くらい描きました。今でもたまにやってみては「加茂井さん。」の中でネタとして使っています。漫画家志望の方には脳の体操としてもおススメです。お題を出すので一度描いてみましょう。はい、「目覚まし時計」。
「第1話」のネームを作る時に何を一番大切にしていますか?
最初からガチガチに設定を固めておくのではなく、思いつくままに本筋と関係無いサブエピソードをちりばめておいた方が得だと思います。その方が後になって活きてくる可能性があるので。例えば「加茂井さん。」に出てくる大原委員長は1話目ではただのモブキャラでしたが、「青木君のことが好き」というエピソードを付け加えていたおかげで、後の回で重要な役割を果たしてくれました。どんな芽が出るか分からなくとも種は撒いておくに越したことはありません。
編集者との打ち合わせで心がけていることはありますか?
お会いする時には必ず赤いパンツを穿くことにしています。模様やロゴなど一切なく、ジャイアント馬場並みの「THE・赤パンツ」です。そうすると打合せが上手く行くというジンクスが自分の中でありますので。どうでもいい話ですね、すみません。ちなみにもう5年くらい穿いてるのでゴムがダルダルになってきました。
新人の頃に言われた言葉で、心に残っている言葉はありますか?
デビュー前、バリバリのバトル漫画を描いていた頃、担当編集者の人に「君なら冨樫先生になれる!」と褒められたことがあります。当時の僕はそれを真に受けて、ひたすら「幽白」や「ハンターハンター」を研究してはネームを描き続けましたが、全く上手く行きませんでした。そこから10年もの月日が流れ、結局今は真逆の作風のラブコメを描いています。でもなんだかんだで10巻目まで到達しました。何が言いたいかと言うと、誰かからの言葉に囚われて自分の作風を決めつけてしまう必要はありません。どうせ新人の頃なんて適当なことしか言われませんから。上手く行かないなと思ったら、褒め言葉だろうと無視して色んな作風に挑戦してみましょう。
漫画を描いていて一番楽しい瞬間はいつですか?
ネームです。もっと細かく言うなら、ネームの吹き出しにパソコンで台詞を打ち込んでいる時です。頭の中にあったアイデアが一つの「作品」として生まれたことを一番実感出来る瞬間だからです。嘘です。単に酒飲みながらでも出来るからです。もっと細かく言うなら、酔っぱらって台詞書いた方が調子良かったりするからです。すみません。マネしないで下さい。
12月12日に発売された新刊「わざと見せてる? 加茂井さん。」10巻について、「ここを一番見てほしい!」というところを教えてください。
10巻目にして初めて表紙イラストに登場した主人公の須藤君です。まぁ裏表紙ですけど。ちなみに加茂井さんと須藤君のツーショットの表紙は最終巻までとっておくつもりです。
12月12日に発売された新刊「わざと見せてる? 加茂井さん。」10巻について、一番好きなシーンやセリフを教えてください。
55話のファミレスのシーンです。サーヤがノアに向けて言う台詞はプロットの段階では考えてなくて、ネームを描きながらアドリブで出来たものです。こういう「勝手にキャラがしゃべり出す」パターンの時は、それだけ自分の「素」の想いが込められているということなので、下手に直したりせずにそのまま使うことにしています。
最後に、プロの漫画家を目指すにあたって一番大事なことを教えて下さい。
なんだかんだで赤いパンツを穿くことです。冗談です。なんというか、普段の友達との会話とか、こういう真面目なアンケートを書く時でも、どこかで隙あらば「ボケる」精神を持っておいた方がいいのかなと。もっとも「ボケる」ことにはそれなりに技量がいるもので、ちゃんと話の最後にオチを持って来たり、伏線を貼って回収したりとか、色々と頭を使わなきゃいけません。そうすることが日常生活でも癖になっている方が漫画を描く上で大きな武器になると思います。身の回りに起こる全てのことは大喜利のお題だと考えましょう。
…ところで「目覚まし時計」の4コマは描けましたでしょうか?それもれっきとした「作品」なので、いつか貴方が描く漫画のネタとして役立ちますように。デビュー目指して頑張ってください!